拠点長挨拶


 「物性物理学」は物質の相転移や電磁気的応答など、さまざまな巨視的物性を微視的な観点から研究する物理学の分野です(詳細)。物性物理研究において、物質の巨視的振る舞いを微視的に理解するためには、その結晶構造と電子状態を精密に調べる必要があります。これらは、車の「両輪」にあたり、それらを統一的に理解してはじめて巨視的性質の発現機構が理解できます。そのためには、これまで協力して研究を行ってきた、理学研究科と先端物質科学研究科の物性研究グループがさらに団結して「巨視的物性観測」「結晶構造」「電子構造」の諸側面を束ね、拠点メンバーで共通認識を持ちつつ意見交換を重ね、最先端の研究成果として世界に発信してくという共同研究体制が必要不可欠です。そこで物理科学専攻(理学研究科)および量子物質科学専攻(先端物質科学研究科)の物性物理研究を行うメンバーをコアとして本研究拠点が平成28年9月に発足いたしました。
 文部科学省が発行した「物理学分野における日本の大学の質と量の状況(2009-2013)」の報告によると、広島大学は物理学の分野において論文の被引用数、すなわち研究の質の指標となる「Top10%の補正論文数の世界シェア率」を示すQ値が12%以上のQ1と評価されました。「論文数の世界シェア率」もV2と高く総合評価では「第1層」に入り、国内で上位8位に位置しております。「中でも広島大学は高性能な材料の性質を探る「物性物理学」で高い評価となった」と強調されているように、物理学の中でも「物性物理学」の貢献が目立ち広島大学の「強み」と捉えられています。
 本研究拠点は「新物質開発」「先端物性計測」「精密結晶構造解析」「精密電子構造解析」を4つの柱として、広島大学の「強み」の一つである「超伝導や磁性の分野を中心とする物性物理学」について他の追随を許さない世界のトップクラスの研究を展開します。具体的には、学内の既存研究グループ間の壁をとり払い、また国内外の卓越した研究者を取り込むことにより「物質中の軌道・スピン・位相の可視化およびそのダイナミクス」を明らかにすることを目標に、密接に協力関係を持ちながら研究を高度化し、若手人材を積極的に育成していきます。